薫風-君といた軌跡-
「だーっ!もう!!お前それ何回目だよ?あーあ、耳タコ」
リュウは缶ビールを片手に、
そう叫んで耳を引っ張って見せた。
深夜1時半。
春休みが終わる2日前。
俺はリュウの部屋で
夜9時くらいからリュウと飲んでいる。
「お前飲むたびにその話すんだろ!?酔い回るの早すぎ」
割と酒に強いリュウは、平気な顔でもう一缶あけようとしている。
俺はというと…結構酔っているらしい。
そしてまた、
初恋の話をしていたらしい…。
「確かにな、いい人だったよな。お前は一生懸命だったと思うよ」
リュウが懐かしむように言った。
「だったらさ!なんで別れるのを止められなかったんだろ。俺、まじ後悔してる」
俺はリュウにつかみ掛かった。
助けを請うような目で、リュウを見る。
リュウは優しく
俺の肩をたたいて
「それがお前とあの人の運命」
とだけ言った。
そしてまた、ビールを口に含む。