パレット
「なんだよ、声かけてけよ」
「いや、楽しそうに練習してたし……」
神林くんは、1on1を中止して、初めてここで挨拶した時と同じように体育館の入口に立った。
「友達?」
もう一人の知らない男子も入口近くに歩いてきた。
「そ。うちのクラスの笠原」
左手の親指で示される。
「ども」
と、ぺこりと会釈されたので、わたしもあわてて返す。
「毎日来てんでしょ?」
神林くんが向き直ってきいてきた。
わたしはちょっと視線をそらせる。
「あと、ちょっとなんだ。完成まで。〆切に間に合いそうだからよかった」
「そか。がんばれ。俺らも今度、試合あるんだ」
「試合! がんばって!」
緊張を隠そうとすると、何故か声が大きくなってしまう。
大き過ぎたかな?
そう思ってちらっと視線を合わせようとすると
「さんきゅ」
またあの、笑顔が返ってきた。