パレット
気付いたら、脳内で何回も再生した単語が、口からぽろっと、つまり、槙十にも聞こえる音声を伴って、こぼれ落ちていた。
槙十が目を見開く。
「……あ、わ、うわっ! えっと、これは、その、あれ? おかしいな、こんなふうに今言うはずじゃ……っ」
何がおこってるのかわからなかった。
わたし今、なんて言ったの。
なんで勝手に口が動いちゃったの。
そんでもって……なんで、え?
え?
キス……されてるの???
多分時間にしたら数秒だった。
そっと触れるだけの、優しい。
でも、十分だった。
わたしの思考が停止するには。
「ま……きと……?」
「ごめ……あーもー、弥白がかわいいから! 俺も好き! 全部好き!」
え、何、何がおこったの?
「……う、そだぁ……」
「嘘じゃないし! つか嘘ってなんだよ!」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに」