パレット
「初デート、だね」
左下から、弥白が俺の顔を覗き込んでくる。
やばい、かわいいって……。
「だね」
付き合う前までは、俺が好き放題言って弥白をからかうのがいつもだったんだけど……。
弥白は、あんまりぺらぺら喋るほうじゃない。
今も隣で、外の景色やら広告をゆっくり眺めてる。
長い髪をチェックのマフラーに巻き込んで、綺麗な爪の指先をもてあそんでる。
化粧っ気がなくて、すごく美人ってわけでもない横顔。
でも、雰囲気が綺麗なんだ。
澄んでる、って言うの?
俺、文才ないからうまく言えないけど……。
って、つい、観察しちゃう。
いつもみたいに俺が喋んないと会話が弾まないのに。
弥白。
俺がこんなにドキドキしてるなんて知らないだろ?
それが、すごく弥白を好きだからだってことも、知らないだろ?