パレット
はぁぁ~わたし、何してるんだろう。
風邪ひいてる槙十に、気を遣わせちゃった。
逆でしょ。
槙十は、なんだか落ち着いてるし。
……わたしなんて、男の子と付き合うのなんか初めてで、それどころか男友達だってほとんどいない。
どのくらい電話とかメールするのかとか。
デートどうしたらいいとか。
もう全部わかんなくてあたふたしてるのに。
……やっぱり、槙十は昔付き合ってた女の子が、いるのかな。
なんとなく、慣れてる感じするもん。
前に、彼女いないの? ってきいたとき。
「今はいないよ」って答えられた気がする。
それって、昔はいた、ってことだよね?
そりゃ、槙十はカッコイイし優しいしバスケもスポーツできるし絶対中学のときからモテてただろうし、彼女がいたっておかしくないしそれは仕方ないことだし……って全部わかってるのに!
ああもう、なんでこんなにぐちゃぐちゃするの。
「弥白、今日、数Bのテスト返ってきたでしょう」
「はい」
帰るなりおかえりもなくテストを要求するお母さんに、鞄の中で折れ曲がった答案用紙を渡す。
わたし、いつまでこうして、お母さんの言うこときいてなきゃいけないんだろう。
どうしてこの人は、わたしに対して、勉強させることしか考えてないんだろう。