パレット
ハンカチを濡らし、なんとか絵の具を落として教室に戻ると、弓美がこっちを見た。
と、同時にさっきはまだいなかった、もう一人もこっちを向いた。
神林くん、だ。
「また絵の具つけたんだって?」
屈託のない笑顔を向けて、からかうように言ってくる。
神林槙十(かんばやしまきと)くん。
わたしの隣の席の、クラスメイト。
「う、うん……朝、早く来て描いてたから……」
「よくやるよな、朝っぱらから」
「そーゆう槙十だって、毎日のよーに朝練してるじゃん」
弓美が横からツッコミを入れる。
「あったりまえだろーキャプテンなんだしさぁ」
そのまま二人は冗談を言い合っている。
ふぅ……
つい、ため息なんて出ちゃったけど。
やっぱり、男の子と話すのって少し苦手だなぁ。
楽しそうに話す弓美と神林くんを見ている方が、どちらかというと落ち着く。
二人とも、美人だしカッコイイし。
絵になるんだよねぇ……。