パレット
一日、雨が降り続ける。
淡く夏を感じた数日後、衣替えをした。
その更に数日後、関東は梅雨入りを迎えた。
じとじとと暗く、蒸し暑い。
午後の古典の授業なんて最悪だ。
おじいちゃん先生の授業は、催眠術かのごとくクラスのみんなを襲う。
寝ちゃダメ、寝ちゃダメ。
わたしは塾に行ってないから、学校の授業を大切にしないと。
そう自分に言い聞かせても睡魔は絶え間なく襲ってくるので、仕方なしにノートに落書きをしながらなんとか耐える。
諦めて机に突っ伏してる人もいれば、器用に寝ている人もいる。
机の下でマンガを読んでる人、こっそりケータイをいじってる人、それに、たまにあちこちでささやくような話し声。
ふと横を見ると、神林くんも後ろの席の子と話していた。
体育祭実行委員になった、バドミントン部の女の子だ。
たぶん、体育祭の全員リレーの順番を決めてる。
神林くん、スポーツなんでもできるもんね。
反対側を向くと、窓の下にはぐしゃぐしゃの校庭。
水たまりに、ランダムに波紋が広がり続ける。
ああ、雨、やだなぁ。
そんなことを思っているうちに、古典なんて、右から左に抜けていく。