パレット

「ん。今週末は試合があるから、来週あたり来ようかな」

「あ、前に言ってた試合?」

「おー。まぁ、試合つっても練習試合だけど。しょっちゅうやってんだ」


部活の話をしてる時の神林くんは、ほんとに楽しそうだ。


「ん、もしかしてそれ、笠原が描いたやつ?」


楽しそうな横顔を見ていたら、急にその顔がこっちを向いた。

思わず、絵を、奥の棚に立て掛けかけた手を止める。

「あっ、うん、そうそう。週末に、会場に搬入してもらう予定で……」


コンテストの話なんて、もう忘れてるかな?

そう思ったけど、返ってきたのは意外な言葉だった。


「完成したんだ! 見してよ。昨日とか朝会わなかったから、忙しいって言ってたの、終わったんかなって気になってたんだ」

「……はい」

適当にかけてあった布を避けて机に置く。


ちょっとしか話さなかったことなのに、覚えてくれてたんだ。

それに、今週は朝早く行かなかったこと、気づいてたんだ。


「きれーな青だな」

少しだけ目を細めて、神林くんが真面目な顔をした。


クラスの男の子が、こうしてわたしの描いた絵を見てるなんて、なんだか不思議。


真面目な顔して見てる神林くんが、不思議。
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