パレット
「おっし、今日はここまで!」
「終わりそうじゃん、良かったね」
いつの間にか部活も終わりの時間だった。
外は、今にも雨が降りそうな空に変わってる。
「なんか、雨降りそう」
「げー、俺、傘持ってない」
「早く帰った方がいいかもよ? わたし傘持ってるし、鍵締めたり片付けあるから、先に帰りなよ」
「ん、さんきゅ」
本当に今すぐ雨が降りそうだ。
わたしは神林くんを急かして見送った。
さて、わたしも帰らなきゃ、そう思って入り口に背を向けた途端、足音が戻ってきた。
振り返ると神林くんがいて。
「何!? 忘れもの?」
「髪だ!」
急に、叫んだ。
「はい?」
わたしはたぶん、すごく不審な顔をしてたと思う。
「なんか違うなーって、ずっとわかんなくて。髪、結んでたんだ」