パレット
もう、呼吸がおかしくて。
気が付いたら神林くんが走ってた。
アンカーのたすきがなびいてる。
みんなで文字を書き込んだ、白いたすき。
走るのは半周なんだけど、20番目とアンカーだけは1周走るんだ。
しかもアンカーにバトンが渡った時点では3チームが接戦で!
「まーきとー!!! 抜かせ―――!!!」
ギリギリ、まだ2位?
みんなの応援が校舎に反響してこだまする。
のど、カラッカラで。
声なんて出そうにないけど、でも。
「神林く―――――ん!!!!!」
聞こえてて、ほしい。
さっきわたしに、神林くんの声が聞こえたみたいに。
長い脚が地面を蹴って。
青チームの人とほとんど同時に、ゴールテープを切った。
でも審判が、ほんのわずかに神林くんが早かったと判定した。
神林くんが、右手をグーにして空に向かって突き上げる。
「っっしゃあぁぁ!!!」
クラスのみんなが一気に駆け寄って、歓声が、頭に響く。
神林くん。
めちゃくちゃ、かっこよかった。