パレット
華 -はな-
◇華----------はな
あの瞬間は、とにかく悔しかった、けど、でも。
誰にもバレないようにした。
わたしが見くびられたせいで、クラスのみんなにまで迷惑かけるわけにはいかないよね。
利用……されてたんだとしても、わたしなら描けるって、思ってくれたことはたしかなんだから。
責めても、ついたペンキは消えないから、何も言わないことにした。
ちょっと部活に行く時間が減るけど、まだ夏休みは半分くらいあるし……ちゃんと綺麗に完成させることが、今のわたしに、できること。
逆に言えば、それくらいしか、わたしにできることはない。
「神林くん」
「笠原! さんきゅ!」
ほんとは、今日も来るかどうしようか迷ったんだ。
わたしなんかが、応援しに来て、いいのかな?
神林くん、わたしなんかと話してくれて、いつか、八方美人とか、言われちゃわないかな?
わたし、神林くんを好きになる資格なんてないのに。
「がんばって。いっぱい練習してるから、神林くんなら大丈夫」
「ん、なんか、そう言われるとそんな気がしてくる」
「あはは、単純」
不思議。
こうなった途端にすらすら会話できる。