パレット
「ちょっと早く手、洗ってきな! あたしが出といたげるから!」
「えっえっはいっ」
なんで?
神林くんから、電話?
わけわかんないけど、弓美が出てくれちゃったから、わたしも急いで戻るしかない。
「えー、いつの? うん。あーそれダメ、彼氏と行く。あ、弥白戻ってきたから代わるよー」
弓美、ふつーに話してるし……。
「はい、がんばって」
「コラ! ……もしもし? 笠原、です」
『おー笠原! あのさぁ、突然なんだけど、夏休み最後の日曜空いてない?』
???
「ん……なんで?」
『今、小野と話しててさ、夏祭り行こうかって話になってて、笠原もどうかなーって』
「お祭り?」
『そ、何人かに声かけてはいるんだけど』
ど、どうしよう……。
ちょっと前だったら、飛び上がるくらい嬉しい誘いなのに、今は素直に喜べない。
だって、神林くんのこと、好きにならないって、決めたのに。
「ほら、弥白、ちゃんと話さないと!」
でも、弓美が聞いてる手前、断れない。
「行くよ、空いてる」