パレット
影 -かげ-
◇影----------かげ



文化祭も終わり、あんなに暑かったのに急に秋の匂いがしてきて、前期末の試験が迫ってきた。


試験勉強に加えて、芸術祭に向けて新作を描きあげるために、また朝早く学校に向かう日々。


今は、花火みたいに色とりどりの、現実にはありえないような花を描いてる。

クレヨン画。


白い紙をグラデーションに塗りつぶした上から黒いクレヨンを重ねて、先の細いもので削ると黒にカラフルな線が浮き上がって絵になるんだ。

絵の中にだけ夏の残り香を閉じ込めてる気分。


「弥白〜これってさぁ」

「あぁ、これはたぶんね……」


試験勉強は、学校帰りに弓美とどこかのお店に入ってやることが多い。


弓美はわたしが部活に行ってる分、直昭さんに会ったり先に勉強したりして合わせてくれる。


ほんとは試験一週間前から部活を休みにするのが普通なんだけど。

芸術祭に出したい絵が描き上がらないとまずいし、ひっそり活動してるだけなら誰も何も言ってこないから、相変わらず美術室通い。


夕方から勉強して、夜も寝るまで勉強して、朝早く学校にいく毎日。


一応うちは進学校だから、うかうかしてるとみんなに置いてかれるしね。


去年もこの時期はちょっとキツかったけど、でもがんばれるんだ。


かきたい絵があるから。


あの時の花火を思い出して描く、繊細な絵。
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