トリップ少女

「あぁ楽しいさ!!!楽しいとも!!!」



魔女はこれ以上ないほど楽しい、と言わんばかりに腹を抱えて笑った




「人の不幸は蜜の味、とはよく言ったものだ!!!私は人間ではないがこの気持ちはよくわかる。なるほど人間もなかなかいいことを言うものだ!!!」



魔女は笑いがこみあげてきて仕方ないようだったが、何とかしてその笑いを抑え、話をつづけた




「だが、もっと楽しいことはまだこれからだ」




そう言っていつの間にか若菜の目の前に移動していた




「私にとってはね、【絶望】が一番の蜜なんだ」


蛇のような目で若菜をなめ回すように見た


そして若菜の輪郭を指でなぞった




「だから、お前たちにもう一度チャンスをやろう」





そういって魔女は胸元から短剣を取り出した




「これで王子の胸を刺すんだ。そしてその血を喉と足につけろ」



「そうすれば、カレンは晴れて元通り、人魚になることが出来るだろう」






ヒヒヒヒヒヒヒヒ



「カレンが、自らの手で王子を殺すってこと?」


「そう。“カレンが、自らの手で王子を殺すってこと”さ」



それだけいうと、魔女はほら貝の上へ戻った



魔女が指をぱちんと鳴らすと、巨大な渦が起こった


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