トリップ少女
何時間もたったような気がする
実際空の闇が深みを帯びてきた
「私たち、まだトリップしてから1時間たってないの?」
若菜はふと疑問に思ってミランに尋ねる
「えぇ、こっちの時間軸ではまだ30分あるわ」
「えっ?おかしくない??30分てこんなに長い…?」
ミランはばかねぇ、といいたげな目を若菜に向けた
懐かしい、と思った
しばらく向けられてこなかった気がする、というかそんな状況じゃなかったのかもしれないけれど
若菜はこの侮蔑の視線をなぜか恋しいと感じてしまった
「若菜はバカねぇ…ここは現実であって現実ではないのよ。だから時間軸も、時の流れの速度も平等ではないのよ。物語がそうであるように」
「ふぅん」
納得いったような、いかないような
その時、カレンが窓を開けて漆黒の空に浮かぶ月を見ていた
満月だった