トリップ少女
「若菜、あっちを見なさい。カレンがいるわ」
カレンの右手には先ほど若菜が渡した担当が握られている
カレンは無表情で満月をぼぅっと眺めている
目は虚ろで、何を考えているのか、そもそも何も考えていないのか、さっぱり読み取れなかった
「ねぇ、カレンの様子がおかしくない?声をかけたほうが」
「行ったところでどうにか出来るの?」
若菜の提案をきっぱりとミランは否定した
「え」
「だから、何かできるのかって聞いてるの」
ミランの雰囲気が一層とげとげしくなった
「何かって…」
カレンに近づいたところで、かける言葉なんて見つかるのか
「出来ないなら、行くべきじゃないわ」
ミランのその言い方が突き放しているような気がして、若菜はどうしようもなく寂しくなった
「なんでそんな冷たいこと言えるの?カレンは仲間じゃないの?」
若菜の頭に血が昇ってくるのが自分でもわかった
ミランはそんな若菜を横目でちらりと見て、ため息をついた
「仲間か、と言われればはっきり言ってNOだわ。あなただってそのはずよ。私たちはこの世界の住人ですらない。でもね、だから突き放してるわけじゃないの」
でも、
釈然としない若菜を、ミランは今度は哀れな目で見て、「分からないならいいわ。いずれわからざるをえないことだから」と話を終わらせた