トリップ少女
そうこうしているうちに、今度はカレンが部屋を出たようだ



「若菜、カレンが部屋をでたわ。おそらく王子の部屋よ。様子が見えるところまで近づきましょう」



「ん…でも、」



ミランが指示を出すも、若菜は従う気になれない




「若菜ってば!!」



ミランは問答無用で若菜の腕を引っ張って、城へ近づいた




カレンの流れるような金髪が隣の部屋からみえた




「やっぱりね、王子の部屋へ向かったわ」




カレンが何をするために王子の部屋に行ったのかは言われなくとも見当は付く




カレンにも見つからないように、二人は息をひそめて近づいた







尾ひれが水をかく音でさえ響き渡ってしまいそうなほど静かな静かな夜だった



部屋は、1本のろうそくの小さな明かりが揺らめく以外は漆黒の闇に包まれていた




完全な闇の中で、カレンの白い肌だけがやけに映えている


同じく白いカレンの右手にはしっかりと短刀が握られていて、鈍い銀白色の光沢を帯びている


カレンの黄金の瞳に映るものは何もない




若菜は呼吸さえままならない



逃げ出したいほど、美しかった




完全な美はかえって恐ろしい




若菜は心の隅でそんなことを思っていた
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