トリップ少女
カレンは王子の顔を見つめる
王子はこの世に悩みなどないかのように、気持ちよさそうに眠っていた
胸に小さく締め付けられるような感じがした
人魚であったときは感じたことはなかったけれど、ここ数日間幾度となくそれは起こっていた
王子に話しかけられたとき
手を握ってもらったとき
頭を撫でてもらったとき
優しく微笑んでくれたとき
その深い目で見つめられたとき
こんな時は必ず、それは起こっていた
カレンは初め、これも魔女の呪いなのかと思った
それほど苦しいと感じたし、これまで胸が締め付けられるなんてことなかったのだから
実はこの“病気”についてカレンは姉として尊敬しているミランに相談したことがある
ミランが笑って「それは“恋”よ」といった
“恋”
その言葉は初めて聞いたけれど、この気持ちを表すのにピッタリな「オト」だと思った
「この気持ちを、人間は恋というのよ」
私は王子に“恋”をしているらしい