トリップ少女

カレンは王子から目を離せない



初めての気持ちを教えてくれた人


こんなにも好きな人に向けて剣を突き立てようとしている自分がもう信じられなくなっていた





王子と結婚できなければ、海の泡となって死ぬ





【死ぬ】



【死ぬ】




死んでしまう




死ぬのは怖い



死にたくなんてない





カレンは恐怖のあまりすがるように王子の手を握った





怖い


助けて




王子は今だ眠っている


幸せそうな寝顔




もし私が剣を刺したら、この優しい人の顔は苦しみに変わるだろう




王子の顔が苦痛で歪むところを想像して、一瞬でかき消す



そしてカレンはふと我に返る






自分がこんなにも恐れている死を、私はこの人に躊躇なく投げてしまうの…?



カレンはあと1センチの所で止めていた刃を王子の体から2センチ、3センチとはなしていった

< 134 / 164 >

この作品をシェア

pagetop