トリップ少女
-私はなんてことをしているのだろう!
カレンはつい今しがた自分がしていたことに自分で怖くなった
自分が生きるためだけに、この人を殺すなんて正気の沙汰ではない
そもそもそのリスクを負ったのは自分自身だというのに
王子にはなんの罪もないのに
-見ず知らずの、素性もわからない私を、一生懸命世話して優しくしてくれたのに
そしてなにより
-初めて愛した人なのに
殺すなんて、私には出来ない
カレンは短刀をおろして、王子の顔を両手で包んだ
起こしてしまわないように、そおっと
王子が少し動いたけれど、よほど疲れているのだろう、目を覚ますことはなかった
そして、優しく軽く触れるだけのキスをした
-さようなら
涙が自然とこぼれた
普通の涙が、かつてカレンが王子の為に作ったエメラルドのブローチの上に落ちた
-さようなら
-いままでありがとう