トリップ少女

カレンが王子の部屋からバルコニーに出た




流れるような金髪と白い肌が満月の銀色の光に照らされて、より一層輝いた



カレンのまわりだけ切り取ったように、空気が吸い込まれている





カレンは漆黒の海を見つめた



若菜とミランが見上げているのに気が付いた




 あ り が と う




 ご め ん な さ い




声には出さなかったけれど、十分だった





「選んだのね」



ミランは今までで一番優しく言った



カレンはゆっくりと頷き、若菜に手招きした




若菜の目から大粒の涙が止まらない




カレンは若菜の顔を包んで、額に軽くキスをした


泣き止まない若菜の頭を優しく撫でた後、少し困ったように微笑んだ




カレンは短刀を若菜に返した


若菜はさらに涙を抑えることが出来ないけれども、しっかりと受け取った


こうすることが一番カレンのためだと思ったからだ





カレンは二人をじっくり見つめた後、しっかりと前を見据えた





 あ り が と う 


 だ い す き





そうして、カレンは静かに漆黒の海に飛び込んだ


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