トリップ少女

「カレン…いい子だったな」



若菜はしみじみと昨日のことを思い出し、にじんできそうな涙をふいて、ぱらぱらとページをめくっていた




「ん…?」




そして若菜は、人魚姫の物語がトリップ前と若干変わっていることに気が付いた



「あれ、こんな話だったっけ?」




たしか人魚姫の話では、魔女の短剣と姉たちの髪を交換したはずだった


本来なら、若菜たちは魔女と直接交換するはずではなかったのだ




「どういうこと?」


「それはね、あなたが物語に参加したことで、物語にとって予定外の出来事が起きたからよ」


「わあ!!」



若菜の隣には、いつの間にかミランとアルスランがいた


いつから隣にいたのかは分からないが、完全に目が覚めてしまった



「予定外の出来事って、たとえば?」


「そうねぇ…色々あるけど、たとえばあなた魔女に直談判に行ったわよね。カレンを助けたいって」


「うん」


「あなたが入ったこと自体、物語にとっては衝撃の災害なのに、その“異物”が意志を持って行動するなんて、物語からしたらどんな気分なのかしらね」



「物語に気分って、人間みたいね」



「当たり前じゃない。物語は生きているのよ」



至極当然に言うミランを見て、前だったら断固反対していたことも、ありうるかな、と思っている若菜がいた



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