月夜の太陽
お父様は紅茶を一口飲むと、何か考え始めた。


その様子を私たちは静かに見ていた。



『実はビリー殿にソルを引き渡せと言われている』

「そんなッッ」

『現時点ではソルは我が国の民だ。そう簡単に引き渡すつもりはない。だがそれもソル次第だ』



みんなの視線がソルに注がれた。


ソルは驚くほど落ち着いていた。


だけどそれは私の不安を煽るかのようだった。



『俺がここに留まればこの国に迷惑を掛けてしまいます。それなら俺はデトイス国へ行きます。例え死が待っていたとしても』

『勘違いしてもらっては困る。私はお前の心を知りたいだけだ。迷惑かどうかはこの国の王である私が決めることだ』



私は思わず息を飲んだ。


おかしな話だが、私は今初めてお父様はこの国の王なんだと思った。


私たちの前ではいつも優しいお父様。


だけど、今はそうじゃない。


この国を統べる王の顔だ。






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