月夜の太陽
筋トレのメニューも順々に終わらせていき、今は最後の走り込みをしている。


城の敷地内を10週走る。


最初聞いたときはその程度でいいのかと思っていたが、考えが甘かった。


敷地内といえど、さすがはウェルヴィア国の王族の城。


広すぎて1週するのも大変だ。



『余裕だな』

『そう?子供の時は嫌で嫌で何度もうやりたくないって駄々をこねた事か』



今は8週目をリオと走っているが、リオの表情は余裕だ。


だが、今話を聞いて納得した。


こんなのを子供の頃からやっていれば、俺なんかよりもリオの力も体力も相当なものだろう。



『ルナは女の子だからやらなくて済んだんだ。僕たちは双子なのにって思うと無性にルナが許せない時期があったんだ』

『今は?』

『今はないよ。それにその当時も僕が疲れて帰るといつもルナは笑顔で待っててくれてた。タオルやら飲み物やらを抱えてね。その姿を見ると僕は男なんだからしょうがないかって思えた』

『そうか』



隣でニヤッと笑みを零すリオを無視するかのように俺は前だけを見て走った。



『ちょっと羨ましいって思ったでしょ?』

『……別に』

『あはは、本当に素直じゃないよねぇ』



今は俺の特訓が終わるのをルナは笑顔で待っててくれる。


それだけで十分だ。






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