月夜の太陽
「何か御用ですか」

『そんなに怖い顔をなさらないで下さい。驚かせてしまったのなら謝ります』

「御用がないならお引取り下さい」

『気配を消していても、その甘くヴァンパイアを魅了する血の匂いは消せませんよ、ローズ姫』



姿はビリー様の筈なのに…別人みたい。


人格が違うなんて問題ではない。


それに、お母様の事をローズ姫と呼んだわ。



「禁忌を犯したのね」

『俺が禁忌を犯したわけじゃない。それに、お前も禁忌のお陰で今そうして生きている。そうだろ』

「そうね」

『そんな顔をしたら綺麗な顔が台無しだ。それに、力を使ったところで周りは気付かない』

「結界を張ったから?」

『本当にお前は物怖じしない女だな。力を使おうが泣き叫ぼうが好きにすればいい。無駄だがな』



今まで感じたことがないほどの恐怖。


恐怖からか、体からは変な汗が流れる。


馬たちもこの男の存在と溢れ出ている力に怯え動揺している。


頭ではお母様を連れて逃げなければと思っているのに、恐怖で体が支配され動けない。







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