月夜の太陽
「ビリー様がお母様の事を"ローズ姫"って言ったの。お母様があんなに怒りと軽蔑を露にしているところを見たことがない」

『怒りと軽蔑?ローズの様子で他に気になるところはなかったか』

「ビリー様じゃない誰かと話をしているようだった。お母様が"禁忌を犯したのね"って彼に言ってた」



その時の彼の表情はとても不気味だった。


すべての者を見下しあざ笑うかのような顔。



『ローズが目を覚ませばある程度のことが分かりそうだな。何故、ローズはお前と一緒に逃げなかった』

「逃げられない理由が出来たって言ってた……私にもよく分からないの」



その時のお母様の目からは強い思いを感じた。


私には分からないお母様が抱えた何かがあったのかもしれない。



『これが最後だ。ローズが今も握っている剣は?』

「剣?それは分からない。私がいたときはそんな物持ってなかったわ」

『そうか……凄く大切そうに握っていて、意識がないはずなのに手放そうとしない』



お父様は今にも泣いてしまうんじゃないかと思うくらい、自分を責めている。


私がもっとしっかりしていれば、お父様にこんな顔をさせなくてすんだかもしれないのに。






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