月夜の太陽
穏やかだったザックさんの表情と空気が一気に静かで落ち着いた、だが力強いものに変わった。



『違う、何があってもローズ様を守り抜くことを皆誓ったんだ。ローズ様はお優しい方だ。自分の為に危険な事を自らする必要はないとおっしゃる。だが、我々は喜んでローズ様の盾になる』

『もう、主は死んだというのにですか』

『キングは我々の中で生き続ける。そして、キングが愛した女性であり、我々に温もりを教えてくれたローズ様が今はかけがえのない存在…主だよ』



ザックさんだけじゃなく、ジオラさんの目からもその覚悟が伝わってくる。



『ソル、まだ納得が出来ないか』

『……できません。この国には騎士団の方々がいらっしゃいます。darkmoonの生き残りが何をするというのですか』

『darkmoonと騎士団では経験してきたものが違う』

『ですが、国民が知れば王室が責められます。皆この国を愛している分、この事を知れば裏切られた気持ちは大きいですよ』



この張り詰めた空気の中、シエル様は何故か可笑しそうに笑い始めた。


その笑いをどのように解釈すればいいのか分からなかった。



『そうだな、お前の言うとおりだ。国民が知れば王族を非難するだろう。だが、我妻はそれも覚悟の上だ。愛する妻の覚悟を私が受け止め共に背負わなくてどうする』

「お母様はどうしてそうまでしてdarkmoonを迎え入れたの?」

『そうしたかったからじゃないのか』

「そんなの理由になってないよ……」

『ローズが目を覚ましたら聞いてごらん。ローズの深い思いを私が語ってしまっては薄っぺらいものに聞こえてしまう』






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