月夜の太陽
お父様は困った様な笑みを浮かべ、椅子の背もたれに背中を預けた。


視線は剣に注がれている。



『闇オークションを取り締まるのは難しいんだ。巧妙に計画を練っているのか、開催地も日程もいつも定かではない』

「それじゃあ一度も取り締まった事がないの!?」

『そう言う話は聞いたことがない。それに闇オークションに限らず、全てを禁止すれば彼らは暴動を起こしかねない。正直なところ、それもあって下手に手は出せないところでもある』

「だけどその剣の様に曰く付きの代物を手に入れた者が、何かをしでかすかもしれないじゃない」

『その確率の方が低いんだよ』



自分で質問をしていながら頭の中はグチャグチャ。


興奮しているのか、体も熱を帯びているような気がする。


熱を冷ますかのように、私はグラスを取り水を体の中に流し込んだ。



「どうしてそんな事が分かるの?」

『曰く付きの代物はどれも力が強くないと扱えないものばかりだからだよ。この剣もそうだ。純血もしくは純血に近い力を持った混血にしか扱えない。王族や貴族には純血がいるが、その様なものを所持しているのが見付かった時点で我々は何らかの処分をかせられる』



これ以上何も言えなかった。


今まで気が遠くなる程長い間これらについてあらゆる王族、貴族が話をしてきただろう。


そしてこの対処法を選んだ。


ならばいくらこの場で私が喚こうが不満を言おうが、時間の無駄に違いない。






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