月夜の太陽
ソルの震える肩に触れようとしたが、出来なかった。


その震えが怒りなのか、悲しみなのか、悔しさなのか私には分からない。



『他に……方法はないんですか……ビリー様を救うことはできないんですか』

『ない。方法は一つ、殺して楽にしてやることだけだ』

『…………』

『ビリー様の事を思うなら、一突きで楽にしてやれ。苦しむ時間が少しでも短くて済むようにな』



ソルはその場に力なく崩れ落ち、そして思いっきり拳を床に叩きつけた。


私はゆっくりと腰を降ろし、ソルの拳を包み込むように手を添えた。


何の罪もない人を自分の手で殺さなければいけない。


こんなことになるなんて誰も想像もしていなかった。


それでも戦うと決めたのはソル自身で、今更誰に任せることも出来ないことはソルが一番分かっているだろう。


顔も知らない父親の尻拭い……ソルはそうも思っているかもしれない。


力なく座っているソルの前に剣が置かれ、ジオラさんとザックさんは何も言わずに部屋を出て行ってしまった。


その大きな後姿が少し……震えているように見えた。


それぞれが辛い気持ちの中に埋もれている。


これ以上埋もれてしまわないように、抜け出せなくなる前に光を見つけたい……そう切実に願うことでしか気持ちを紛らわすことができなかった。







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