月夜の太陽
顔を上げようとしないソルの肩にそっと頭を乗せた。


そしてよっかかるように体を預け、ソルの腕に自分の腕を絡めた。



「どうしてあの日逃げるようにいなくなったの」

『あの日?』

「以前今日みたいに月の光を浴びてたソルを見かけたことがある。サハルドに見付かっちゃって、ちょっと目を放した隙にいなくなってた」

『…あの時の………この姿を見られたくなかった。ただそれだけだ』

「月明かりに照らされている姿があまりにも綺麗で、妖精かと思った」

『……妖精?冗談だろ』



ソルは信じられないと言う笑を零し、私もつられて笑ってしまった。


冗談なんかじゃないよって言ったら余計笑われてしまいそうだから、黙っておこう。



「街に出たのはその妖精にまた会いたかったから」

『それだけの為に危険を冒してまで城を出たのか!?』

「ずっとお城で暮らしていた私にとってはその出会いはとても大きな事で何よりも大切な事だったの。初めての感情だった…不思議な想い」



雲ひとつない空で満月はずっと私たちを照らしてくれている。


まるで私たちの為に光を放ってくれているんじゃないかと錯覚しそうになる程に。



「でもね、ソルに出会ってソルの事を好きになって妖精の事はどうでもよくなっちゃったんだ。その時の妖精とソルが一緒で良かった…今凄く嬉しい気持ちでいっぱい」

『嬉しい?』

「トキメキも恋もキスも全部ソルが初めてで嬉しいの」





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