月夜の太陽
想像以上に厳重体勢を取られていることに驚いた。



「……イエラ様は?」

『母は勿論今の状況を知ってはいるが、あくまで状況を理解しているだけだよ。父の身に何が起こっているのかは知らないんだ』

「ビリー様の事、聞いたの?」

『シエル様が使い魔を送って下さったんだよ。事実を知っているのはヘイザスおじい様、レバンナさん、アリアさんそして私の4人だけだ……母にはまだ、話をする勇気がないんだ……』



ビリー様からどんなに酷い仕打ちを受けようと、誰にも言わずに耐え続けていたのはきっとビリー様が昔に戻ってくれると信じていたから。


そして、愛していたからだと思う。


そんなイエラ様に全てを話してしまえば受けるショックは計り知れないだろう。



『ビリー殿は今何を?』

『今は城にはおりません。城の周りで不穏な動きが起きているから調査に行くと出て行ってしまいました。もう、完全に父ではないのでしょうね…姿が変わっていなくとも』

『……身も心も既にレイドが支配しているだろう』

『変な商人が出入りするようになって、父の様子が段々と可笑しくなりました。それはdarkmoonが滅びる前から始まっていたことです。レイドが死ぬ前に気付いていればこの最悪な事態を防げたかもしれないと思うと…やり切れない思いでいっぱいです』



ロナウドのカップを持つ手が震えていて、震えを静めようと逆の手で必死に押さえている。


辛そうな顔を浮かべているのはロナウドだけじゃない。


ここにいる全員が同じように苦しんでいる。






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