月夜の太陽
ジオラさんやローズ様からこんな女性の話は聞いたことがない。


何か理由があって離れ離れになってしまったのか、捨てたのかは分からないが、死んでもなお我が子としてこんなにも愛しているというのに、何故この人はカインと離れてしまったんだろうか。


涙を拭う彼女の手がほんの少し震えているように見えた。



「私はエリーと申します。貴方のお名前を聞いてもいいかしら」

『ソルです』

「ソル……私も貴方がカインとどういう関係だったか伺ってもいいのかしら」

『俺はカインとは会ったことがありません。カインも俺の事は知りません。でも、どうやら俺はカインの息子らしいです』



驚きと喜びが混じったような不思議な表情のままエリーは俺の顔を覗きこむかのように固まってしまった。


そして、また一つ、二つと涙を流し、遠慮がちに指先で俺の頬に触れ、なぞるように顎へと滑り落ちていった。



「そう言われて見れば、カインの小さな頃の面影が少しあるかもしれないわ。でも、どうして会ったこともないのにカインが父親だと?」

『ローズ様が間違いないだろうと仰っていましたから。他の方の証言からも間違いないみたいです』

「ローズ様って………」

『現ウェルヴィア国王妃のローズ・エメラルディア様です。俺の顔は本当にカインにそっくりだと仰っていました』



信じられないとでも言いたげな表情を浮かべているエリーを見て、無理もないかと思った。







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