月夜の太陽
「何度も何度も死にたいと思ったわ…それに、死ぬ機会なら何度かあった。それでも死ねなかったわ」

『どうして…そんな辛い思いをしてまで生きたいと?俺ならそんな屈辱耐えられなかったかもしれないです……』

「どれだけ酷い屈辱だったかもよく分かっていたわ。でもそれ以上にカインの事が心配だったの……いつか、死ぬのではなくここを出ることが出来たら、あの子を探したいと思うほどに」



エリーと早くに再会できていれば、カインは組織をつくることも手を汚すこともなかったかもしれない。


だがそうなっていたら俺は生まれていなかったかもしれない、そう思うと複雑な気持ちになった。



『どうしてカインは見付からずに逃げ延びたと思ったんですか?殺されている可能性の方が強いはずなのに』

「伯爵があの子を殺していたなら、剥製にして私の目の前に満足気な顔をして飾ったはずよ。気の狂った悪魔のような人だったから……だけどあの日、私の思いは天に届いていたんだと思ったわ」

『あの日?』



そう言って穏やかに笑うエリーはどこかローズ様に似ているような気がした。


大きな温もりを胸に抱えている姿が似ているのかもしれない。





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