月夜の太陽
エリーは一息つくと直ぐに話をまた始めた。
「牢獄で1人夜空を眺めていると、何処からともなく泣き叫ぶような声が聞こえてきたわ。そして焦げ臭い臭いがして屋敷が燃えているのではなかと思った」
『屋敷が?』
「そう、どんどん臭いは強くなり核心に変わったわ。私は急いで牢屋を出ようと扉に何度もぶつかったわ……右腕が使えなくなるのではないかと思うくらい」
エリーの話を聞いていると、自分が恥ずかしくなった。
自分が何者か分からないとうじうじと悩んでいた自分が………。
「牢は古くなっていたから運よく扉が外れ、そして急いで外へ向かったわ。その時廊下の窓から伯爵が逃げていく様子が見えたの…護衛を連れてね。これで私は自由の身、これでようやくあの子を探しに行けると喜びを感じたわ」
『天に届いた願い……ですか?』
「これだけではないの。屋敷の中はまだ逃げ回っている使用人たちでうじゃうじゃしていて、その中を私も必死に走って逃げていた。その時1人だけ只立ちつくし冷静に周りを見渡している黒いフードを被った者がいた」
俺はもうなんとなくそれが誰なのか分かった。
奴しかいない。
『………カインですか』
「顔はハッキリとは見えなかったのだけれど、微かに見えた目は銀色で少し零れた髪の毛も金色だったの。逃げ惑う流れに逆らいながら少しでも近付こうとしたわ…何度も何度も名前を呼んだ…だけど彼は気付いてくれなかった。私の言いつけ通り過去を忘れアッシュという名ももう忘れていたのね…………」
『なら、その時はカインとは会えなかったんですか』
「彼はフードを深く被り反対方向へと足を進めてしまったの……その時に彼の手の甲にタトゥーが見えたわ。彼を探す手がかりになると思った。もしそれが何か分からなくとも、恐らく伯爵を殺しにきたあの子は逃げた伯爵をまた殺しに行くだろうと思った」
「牢獄で1人夜空を眺めていると、何処からともなく泣き叫ぶような声が聞こえてきたわ。そして焦げ臭い臭いがして屋敷が燃えているのではなかと思った」
『屋敷が?』
「そう、どんどん臭いは強くなり核心に変わったわ。私は急いで牢屋を出ようと扉に何度もぶつかったわ……右腕が使えなくなるのではないかと思うくらい」
エリーの話を聞いていると、自分が恥ずかしくなった。
自分が何者か分からないとうじうじと悩んでいた自分が………。
「牢は古くなっていたから運よく扉が外れ、そして急いで外へ向かったわ。その時廊下の窓から伯爵が逃げていく様子が見えたの…護衛を連れてね。これで私は自由の身、これでようやくあの子を探しに行けると喜びを感じたわ」
『天に届いた願い……ですか?』
「これだけではないの。屋敷の中はまだ逃げ回っている使用人たちでうじゃうじゃしていて、その中を私も必死に走って逃げていた。その時1人だけ只立ちつくし冷静に周りを見渡している黒いフードを被った者がいた」
俺はもうなんとなくそれが誰なのか分かった。
奴しかいない。
『………カインですか』
「顔はハッキリとは見えなかったのだけれど、微かに見えた目は銀色で少し零れた髪の毛も金色だったの。逃げ惑う流れに逆らいながら少しでも近付こうとしたわ…何度も何度も名前を呼んだ…だけど彼は気付いてくれなかった。私の言いつけ通り過去を忘れアッシュという名ももう忘れていたのね…………」
『なら、その時はカインとは会えなかったんですか』
「彼はフードを深く被り反対方向へと足を進めてしまったの……その時に彼の手の甲にタトゥーが見えたわ。彼を探す手がかりになると思った。もしそれが何か分からなくとも、恐らく伯爵を殺しにきたあの子は逃げた伯爵をまた殺しに行くだろうと思った」