月夜の太陽
俺は気になった事を聞いてみた。


もしかすると、リオから聞いた時期と被っているかもしれない。



『もし分かればなんですけど、その屋敷が燃えた時期とサルエラが滅んだ時期は同じくらいじゃなかったですか』



エリーは目を見開き、驚きの表情を向けられた。



「どうして知っているの?当時はサルエラ国の件があったから伯爵の屋敷とは言え、特に噂にはならなかったはずなのに………」

『部下がサルエラを滅ぼしているうちにカインは姿を消し、数ヶ月戻ってこなかったらしいです。自分の組織を人任せにして何してたんだってずっと考えてたんですけど、そういう事だったんですね』

「……伯爵が生きている限り本当の第二の人生は訪れないと思っていたんじゃないかしら」



切ない笑みを見せたエリーを慰めるかのように、柔らかい風がゆっくりと吹いた。


同時に薔薇の香りに包まれ、少しの間俺たちは薔薇の香りを味わうかのように目を瞑り沈黙になった。



「私が伯爵を探し出したときはもう既にあの子が殺した後だったわ。だからタトゥーの組織を探すことにしたの……そしてやっと再会できたの…このお墓と……」



押さえていた感情が止まることなく溢れ出ているかのように、涙が次々と零れ落ち、拭うことなく泣き続けるエリー。


俺は掛けることばもなく、エリーが泣き止むのをずっと座って待っているだけだった。


そうする以外思い浮かばなかった。






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