月夜の太陽
泣き止んだエリーから、申し訳なさそうな恥ずかしそうな顔を向けられ、俺は思わず笑ってしまった。


俺の笑った顔を見ると、エリーも嬉しそうに笑みを零した。



「そうやって笑うとカインにそっくりね」

『そうですか』

「貴方は貴方でとても複雑な思いを持っているようだけれど、今何をしようとそれが自分の納得できるものだったかは後にならなければ分からないのよ。だから、今信じるものを見失わず、自分らしくおやりなさい」

『………貴女に会えて良かった。カイン……父のことも少し理解できたような気がします』



華奢な体だけど、しっかりとしている腕に包まれ、俺も返事をするかのようにエリーを包み返した。


今まで感じたことのない温もりを感じる。



「知らない間にお祖母ちゃんになっているなんて思ってもみなかったわ。私は何があろうとソルの見方よ、きっと私の他にも貴方の見方は沢山いるわ」

『はい……ありがとうございます。また、お会いできますか』

「勿論よ。たいていはいつもこのくらいの時間にここにいるわ。また会えるのを楽しみにしているわね」



エリーに見送られ俺は馬車に乗り込んだ。


馬車が、俺が見えなくなるまでエリーは手を振ってくれていた。


帰りの馬車の揺れは来るときよりも心地よく、俺の気持ちを表しているようだった。


自分がこんなに単純な生き物だとは思わなかった。







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