月夜の太陽
お母様の隣に腰を下ろすとお母様はすぐさま結界を張り、お父様はその上からまた結界を張っていく。


結界のベールが地面から円を描くように私たちを覆っていく。


結界を張られていても外の音も臭いも感じるし、気配だって読み取れる。


握られている手に力が入れられ顔を上げると、お父様の顔つきが鋭く冷めたような顔になっていて、一瞬にして私の体を緊張が走った。



『これはこれは、お久しぶりですシエル王子』

『部下から聞いていないのか、俺はもう王子ではない。ウェルヴィアの王だ』

『失礼。今はまだウェルヴィアの王であり、この世界を統一する王かもしれんが、この世界に王は2人もいらない』

『お前とこうして話をするのは初めてだが、聞いていた以上に自意識過剰な奴らしいな……レイド』



この広い闘技場にレイドの笑い声が響き渡る。


中身はレイドだということは分かっているが、姿や声はビリー様で不気味さを感じずにはいられなかった。


ビリー様の魂は無事なのだろうか……もし無事だったとしても、ソルの手によって殺されてしまうならもうここにビリー様の魂はない方がいいのかもしれない。


強張った体をお母様が解す様に撫でてくれるが直ぐには解れそうになかった。





< 395 / 471 >

この作品をシェア

pagetop