月夜の太陽
気配を消しているのか、どこにいるのか全く分からない。


なんとなく視線を感じる気がする程度だ。


端から見れば、俺一人がただ走っている様に見えるだろう。


何故だか頬についた傷が塞がらない。


いや、徐々に塞がりつつあるが、いつもだったらとっくに塞がっている程度の傷だ。



『諦めろ』



前に一人、後ろに二人…挟まれた。



『理由も分からないまま襲われろと?』

『存在が邪魔だ』

『生意気だと喧嘩を売られることはあったが、邪魔だと喧嘩を売られたのは初めてだ』

『これは喧嘩ではない。お前を殺しに来たのだから』



さっきから喋っているのは前にいる男だけで、後ろにいる二人は言葉を発しない。


極力正体がばれないようにしているんだろう。






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