青春の蒼いカケラ
ついに二百五十六回目で追い付き、そのまま僕が逃げ切った。ちょっと得意気にナカタ君を見ると、『いやぁまいった』と言いながら、僕に笑顔を投げ掛けてくれた。
二人とも汗だくだ。
「よし、今度は腹筋で勝負だ!」
ナカタ君の挑戦を再び受けた僕は、あとちょっとのところで今回は負けてしまった。負けたのに、意外と悔しさはない。
「なおちゃんって結構体力あるな。都会育ちって言うからもっとひ弱かと思っていたぞ」
「へへへ……サッカーで鍛えてるからね」
「よし!それじゃ今度の日曜、一緒に少林寺に行かないか?」
「少林寺か……それってどこで教えてくれるんですか?」
「ここ。この学校の体育館で毎週、近所の住職が教えてくれるんだ」
「僕もやってみようかな」
「おいでよ。歓迎するよ」
少林寺教室の師範『アベさん』は、結構体格の立派な人だ。話を聞くと、どうやら昔は警察官だったらしい。道理で凛としていて、動作のひとつひとつにきれがある。
体育館の中には僕らを含めて十名強の男女が集まっていて、アベさんの発言や動きをひとつも漏らすまいと注目している。
僕はアベさんに呼ばれ、前に立たされた。
「今日から一緒に練習する事になった井上君だ。ほら、挨拶して」
「井上なおとです。よろしくお願いします」
「では前蹴りの練習から始めるぞ。井上君も場所に戻って」
体育館の扉の方を向いて一心に蹴り上げる。
僕の蹴りを見て、師範が『ちょっと違うな』と言いながら近付き、『ここは左の軸足を斜めに置いて、右足で蹴ったと当時に左足を直角に曲げるんだ』と教えてくれた。
サッカーをやっていたお蔭で意外とすんなり覚える事が出来た。覚えられると楽しくなる。練習とはそう云ったものだ。
その次に習ったのが『抜き肩』だ。
手首を相手に掴まれた時、如何にして抜け出すか、と云う、至極簡単な事なのだが、これにもコツがある。『手首を外すには掌を広げながら手首を返し、相手の親指に這わせるように回すと外れるんだ』と教えてくれた。
これは確か、竜虎第一で観た事がある。やってみると、これも意外とすんなり出来た。
この日以来、僕にとっての少林寺は日常の一部になった。
二人とも汗だくだ。
「よし、今度は腹筋で勝負だ!」
ナカタ君の挑戦を再び受けた僕は、あとちょっとのところで今回は負けてしまった。負けたのに、意外と悔しさはない。
「なおちゃんって結構体力あるな。都会育ちって言うからもっとひ弱かと思っていたぞ」
「へへへ……サッカーで鍛えてるからね」
「よし!それじゃ今度の日曜、一緒に少林寺に行かないか?」
「少林寺か……それってどこで教えてくれるんですか?」
「ここ。この学校の体育館で毎週、近所の住職が教えてくれるんだ」
「僕もやってみようかな」
「おいでよ。歓迎するよ」
少林寺教室の師範『アベさん』は、結構体格の立派な人だ。話を聞くと、どうやら昔は警察官だったらしい。道理で凛としていて、動作のひとつひとつにきれがある。
体育館の中には僕らを含めて十名強の男女が集まっていて、アベさんの発言や動きをひとつも漏らすまいと注目している。
僕はアベさんに呼ばれ、前に立たされた。
「今日から一緒に練習する事になった井上君だ。ほら、挨拶して」
「井上なおとです。よろしくお願いします」
「では前蹴りの練習から始めるぞ。井上君も場所に戻って」
体育館の扉の方を向いて一心に蹴り上げる。
僕の蹴りを見て、師範が『ちょっと違うな』と言いながら近付き、『ここは左の軸足を斜めに置いて、右足で蹴ったと当時に左足を直角に曲げるんだ』と教えてくれた。
サッカーをやっていたお蔭で意外とすんなり覚える事が出来た。覚えられると楽しくなる。練習とはそう云ったものだ。
その次に習ったのが『抜き肩』だ。
手首を相手に掴まれた時、如何にして抜け出すか、と云う、至極簡単な事なのだが、これにもコツがある。『手首を外すには掌を広げながら手首を返し、相手の親指に這わせるように回すと外れるんだ』と教えてくれた。
これは確か、竜虎第一で観た事がある。やってみると、これも意外とすんなり出来た。
この日以来、僕にとっての少林寺は日常の一部になった。