青春の蒼いカケラ
* * *
中学二年になって、僕は音楽にも目覚めた。
周りが歌謡曲に夢中になる中、僕はレッドツェッペリンに夢中になった。ジミー・ペイジの泣くようなギターに魅せられ、レスポールタイプのギターを買ったのもこの頃だ。祖父母から毎月一万円ずつ受け取って、CDも買い漁った。それを聞く為にCDラジカセも買った。これで父の自作コンポともおさらばだ。ギターをかき鳴らす為のギターをアンプも買った。
思えばこの頃は小遣いに苦労した覚えはない。
この頃の僕の毎日は充実していた。
少林寺にのめり込む中、型も裏拳も膝蹴りもマスターし、もはや過去の僕は完全に払拭されていた。鎌倉に住んでいた当時の僕はもういない。だが、三級に合格するに当たり、拳法を用いての喧嘩は全て封印された。
それでも毎日、ナカタ君と話す少林寺の話は尽きる事がない。組手の相手も常に彼と、だ。
三年に上がる前に、僕らの分校は池尻第一中学校に統廃合された。真新しい鉄筋コンクリートの校舎。僕は新しい学校で放送部に入った。ここでなら好きな音楽をお昼の時間、流す事が出来る。当然、選んだのはツェッペリンやピンクフロイドだ。
周囲の分校が廃校になり、統廃合された学校には、結構がたいのいい連中もいた。その中のひとり、ミチザネ君は、三年四組の僕の後ろに座っていた。喧嘩を封とじられている事もあって、僕は努めておとなしくしていた。
そんなある日、僕の机に間違って誰かの毛糸の袋がぶら下げられている事に気付いた。袋の口からはラブレターと思しき手紙も覗いている。持ち上げてみると、いい香りもする。
当時の僕の恰好は、内側に虎と龍が向かい合った刺繍の施された半長ラン。
そんな僕の後ろから野太い声が掛かった。
「悪いな。それ、俺のだよ。そう言えば、お前の半長ラン、格好いいな」
「ミチザネ君のボンタンも似合ってますよ」
「お前、部活は決まってるのか?」
「放送部です」
「違う。運動部はどうするんだ?って聞いているんだ」
「決めてませんよ」
「だったら野球部にこないか?」
「いや、やめておきます」
「そうか……」
中学二年になって、僕は音楽にも目覚めた。
周りが歌謡曲に夢中になる中、僕はレッドツェッペリンに夢中になった。ジミー・ペイジの泣くようなギターに魅せられ、レスポールタイプのギターを買ったのもこの頃だ。祖父母から毎月一万円ずつ受け取って、CDも買い漁った。それを聞く為にCDラジカセも買った。これで父の自作コンポともおさらばだ。ギターをかき鳴らす為のギターをアンプも買った。
思えばこの頃は小遣いに苦労した覚えはない。
この頃の僕の毎日は充実していた。
少林寺にのめり込む中、型も裏拳も膝蹴りもマスターし、もはや過去の僕は完全に払拭されていた。鎌倉に住んでいた当時の僕はもういない。だが、三級に合格するに当たり、拳法を用いての喧嘩は全て封印された。
それでも毎日、ナカタ君と話す少林寺の話は尽きる事がない。組手の相手も常に彼と、だ。
三年に上がる前に、僕らの分校は池尻第一中学校に統廃合された。真新しい鉄筋コンクリートの校舎。僕は新しい学校で放送部に入った。ここでなら好きな音楽をお昼の時間、流す事が出来る。当然、選んだのはツェッペリンやピンクフロイドだ。
周囲の分校が廃校になり、統廃合された学校には、結構がたいのいい連中もいた。その中のひとり、ミチザネ君は、三年四組の僕の後ろに座っていた。喧嘩を封とじられている事もあって、僕は努めておとなしくしていた。
そんなある日、僕の机に間違って誰かの毛糸の袋がぶら下げられている事に気付いた。袋の口からはラブレターと思しき手紙も覗いている。持ち上げてみると、いい香りもする。
当時の僕の恰好は、内側に虎と龍が向かい合った刺繍の施された半長ラン。
そんな僕の後ろから野太い声が掛かった。
「悪いな。それ、俺のだよ。そう言えば、お前の半長ラン、格好いいな」
「ミチザネ君のボンタンも似合ってますよ」
「お前、部活は決まってるのか?」
「放送部です」
「違う。運動部はどうするんだ?って聞いているんだ」
「決めてませんよ」
「だったら野球部にこないか?」
「いや、やめておきます」
「そうか……」