青春の蒼いカケラ
 彼に従ってトイレまで行くと、個室の前にはケンタロウもいる。望むところだ。彼が相手なら封印も何も関係ない。
 先に一発殴らせる。これならば容赦の必要もない。懐に蹴りを一発。これで両者の闘争心に火が着いた。ケンタロウの舎弟連中も、ただ黙って両者を見守る事しか出来ない。
 激しい闘いの末、結局、僕らのタイマンはお互いが一歩も引かないままドローで終わった。ケンタロウの舎弟連中も、さっきとは違った熱い視線を投げ掛けている。
 『お前、思ったより強いな』と言って、ケンタロウが僕の横で鼻血を流しながら笑っている。
 僕はケンタロウに肩を貸して立たせながら『ケンタロウこそ』と笑顔を返した。
 その日以来、僕らはライバルでありながら親友になった。彼の舎弟も、今や僕の舎弟みたいなものだ。
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