青春の蒼いカケラ
 僕は配送センターまでの通勤用にスクーターを買った。
 相変わらずハルオちゃんは時々アパートにやってくる。そしていつもの通り、競馬の話で盛り上がる。彼に貸した十万円は、未だ回収出来ずにいる。
 僕はその年の夏、初ボーナスでパソコンを購入した。インターネットは便利な機能だ。今までは専門雑誌や新聞ばかりに頼っていた予想も、世界観が広がって、今まではまったく見えてこなかった展開が読めるようになった。
 これならイケる!
 試しにこの法則に則って購入すると、面白いように当たる。
「ハルオちゃん、俺の予想に乗って身みない?」
「ああ」
 ハルオちゃんは首を縦に振った。
「よし。じゃあ次の日曜日、東京競馬場で勝負だ!」
「随分と自信あり気だけど、本当に大丈夫なんだろうな……」
「自信はあるよ。うん、大丈夫さ」
「そうか。まぁいいや。よし、行こう」
 レース開催の当日、僕らの姿は朝から競馬場の入場口にあった。第一レースから様子を見て、メイン直前のレースに賭ける。馬場コンディションも上々だ。これなら僕の予想も格段に跳ね上がる。
 入場券を買って競馬場の中に入った。ここからが本当の勝負だ。左側の席の下から二番目。ここからならば正面のスクリーンもはっきりと見る事が出来る。
 ハルオちゃんは僕とは違い、入場する前から場外馬券場で券を買い、第一レースから楽しんでいたようだ。僕の分と称して買った方は見事に外れ。主軸からの総流しで買った『ハルオちゃんの分』は当たったらしい。どちらにせよ、僕にはあまり関係がない。
 今日の僕の予想は三連単。
「なおちゃん、今日はいくら持ってきたんだ?」
「ああ、四十万。とは言っても貯金と合せてだけど」
「手持ちは?よ」
「二十万。半分だけ、な」
「ま、それだけあれば十分過ぎるだろ」
 本命レースの前に、肩慣らしで賭けた馬券は見事に的中。今からして
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