青春の蒼いカケラ
 どうやらさっき教えたレースで、大勝ちしたらしい。僕も嬉しくなって、帰り道、祝勝の記念に洋服屋で夏服を買った。
 アパートに戻って買い込んだ荷物を降ろし、食材を冷蔵庫に入れて、ふと冷蔵庫の横にぶら下げられたラックが目に入った。
 一番上のラックからはみ出した封筒。ここに引っ越してきた時に、従姉が送ってきたものだ。お祝いと称して図書券も入っていた。
 僕はお礼を言うのを忘れていた事を思い出し、従姉に電話を掛けた。
「ご無沙汰してます。なおとです」
「なおちゃん?久しぶり」
「先日のお礼がまだだったから」
「いいのよ、そんな事。それより今年のお盆、青森には戻らないの?」
「どうしようかなぁ……」
「なおちゃん、まだ仕事始めたばかりだものね」
「社長に掛け合ってみるかな……」
「無理しなくていいわよ。ねぶたジュース送るから」
「りんごジュース?やったぁ!」
「それじゃ、お仕事頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」
 僕だって気にならないわけではない。望郷の念がないわけでもない。
 でも……
 そう思っていたところへ、ノリちゃんからメールが入った。

――今晩、食事でも一緒にどうですか?――

 僕はすぐさま『いいですよ』と返した。
 駅近くの小奇麗なレストラン。窓際の二人だけになれるスペース。向かい合う彼女も数杯飲んだワインが回ってほんのり赤い。
 終始、高校時代の話に花が咲き、思い出話をおかずに二人ともワインが進む。
「へぇ……ノリちゃんも就職したんだ」
「ええ、取り敢えずですけどね」
「おめでとう!それじゃ就職祝いにもう一本、ワイン追加ね」
「ありがとう」
 結局、二人で三本開けてしまった。ノリちゃんは目が虚ろだ。このま
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