青春の蒼いカケラ
まレストランに置いて帰るわけにもいかないので、僕はタクシーで自分のアパートに彼女を連れてきた。階段も僕が支えないと歩いて上がれないくらいだ。
 取り敢えずベッドに寝かせる。寝返りを打つ度にパンティがチラチラと見えて、気が気じゃない。思わず襲い掛かろうとして、寸でのところで思い止まった。
 恥ずかしながら、僕の経験は風俗止まり。素人の女の子にどうしたらいいのかが解らない。
 僕はまだネットの繋がっていないパソコンの電源を入れた。ネットに繋がっていないとは云え、中には競馬対策用のソフトも入っている。
 僕は気持ちを落ち着かせる為、結局、朝までずっとパソコンと睨めっこしていた。
「おはよう……えっと。ここってなおちゃんの部屋?かな……」
 やっと起き出してきたのりちゃんが、努めて背中を向いたまま、見ないようにしていた僕の背後から声を掛けてきた。
 僕は背中を向けたまま、『そうだよ』と返す。彼女はベッドから降りてきて、僕の横に座った。
「昨日は私、酔っ払っちゃったみたい」
「気にしなくていいよ。おはよう」
「ごめんね。何か私……」
「それより頭痛くない?大丈夫かな……」
「ありがとう。お水くれる?」
「おお、ちょっと待ってて」
 僕の持ってきた水を一気に飲み乾し、彼女は少し、落ち着きを取り戻した。
「ねぇ……ここで煙草吸っていい?」
「ノリちゃんも吸うようになったんだ。ほら、灰皿はここだから。自由に使って」
「うん」
 二人して狭い部屋の中で吸ったものだから、お互いが見えなくなるほど室内が真っ白になった。思わず二人して笑い出す。昨日、高校時代の話で盛り上がった時より、今の方が真に心から笑い合える。そんな幸せな瞬間を、目覚まし時計の無粋な音が邪魔をした。
「そろそろ行くね」
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