青春の蒼いカケラ
 ハルオちゃんは僕の説明にいちいち頷き、興味津々だ。
 ハルオちゃんはビールを一気に煽ってテーブルに叩き付け、急に立ち上がった。
「行こう!今からなら今夜のレースに間に合うだろ?」
「いや、やめておくよ。僕、そんなお金。持ってないから」
 ハルオちゃんは残念そうに、おとなしく席に着いた。急に大きな声を出しただけに、周りを気にして背中を丸め、小さくなっている。
 僕はハルオちゃんにもう一度、五十万のお礼を言って、ファミレスを出た。ほろ酔い加減の夜風が気持ちいい。
 帰りに寄った家電量販店でホームページ作成ソフトと画像編集ソフトを買い、アパートに戻って早速インストールを済ませる。いよいよ明日にはネットも開通だ。
 画像編集ソフトを使って、絵を描いてみる。
 最初は慣れないマウスでの描写に四苦八苦していたが、それでも次第に慣れてくると、何もないキャンバスに樹を生やしてみた。その上に夜空と月。水平線を真っ赤に染めて沈み行く太陽。意外といける。
 そこは昔取った杵柄。やり方になれてしまえば絵は思い通りにキャンバスを彩ってくれる。
 僕は会社にあった上級画像ソフトを思い出した。あれならばもっと思い通りの絵が描けるはずだ。本来は建築物を立体に描く為にあるのだが、幸いな事に、それも僕の担当。ここはありがたく使わせて戴こう。
 僕はもう少しやりたい気持ちを抑え、その日はちゃんと睡眠薬を飲んで眠りに付いた。


    *  *  *


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