青春の蒼いカケラ
「雇用保険は?」
「完備されてますよ」
「今、保険証は?」
「はい、持ってます」
「じゃあそれ、ちょっと貸してもらえるかな?」
「はいどうぞ」
 カワチさんは、奥の部屋にコピーを取りに行って戻ってくると、『ありがとう』と言って戻してくれた。
「どうする?手取りがそれくらいなら、思い切って福祉手当、切っちゃおうか?」
「はい、そのつもりできました」
「そうか……ちょっと不安だけど」
「もう大丈夫ですよ」
「その言葉、信じる事にしよう。また何かあったら遠慮なく相談していいんだからね?」
「はぁ……ありがとうございます」
 とは言え、僕も再びお世話になる気などさらさらない。これで隠れずに堂々とバイクにも乗れる。馬券も誰に咎められる事なく大っぴらに買いに行ける。僕の中にはマイナスの要素など微塵も残っていなかった。
 午後になってネットの工事の人がきて、僕の部屋にもインターネットが通った。先日、競馬場で申込書を持ってきて、既に競馬のネット投票《パット》も申し込み済みだ。抽選に漏れなければ自宅で日本中のレースが購入出来る。購入資金は銀行にストックしておけばいい。早速、今日のレース開催場所を見ると、船橋だけだった。
 あそこは先日、大負けしているだけに、やる気が出ない。明日ならば大井のトウィンクルがある。出来れば今日受け取った五十万はそちらに回したい。
 僕はパソコンを閉じ、明日に備えて今日は早めに休む事にした。


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