青春の蒼いカケラ
    第一章 遁走曲《フーガ》
    青年泣きべそ編


 僕は横浜の本郷台に、家族四人、アパート暮らしをしていた。父はタクシーの運転手。母はパーマネント屋の雇われ店主。
 二つ下の弟は小学校の四年生。背丈は低いが文武両道。体育と算数、国語に至っては学年でもトップクラスだ。
 そんな僕ら家族が鎌倉に引っ越したのは、僕がこれから中一に上がったばかりの、春まだ浅い麗らかな日の午後の事だった。
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