青春の蒼いカケラ
出発青春編
今回の僕の部屋も家賃は五万二千円。『だいたいこれくらい』と金額で選んでいた事もあって、前回とまったく同じ金額だ。先日、ハルオちゃんと一緒に片付けて、彼を駅まで送って行く途中で飛び込んだ携帯ショップで、お揃いの携帯を購入したのだ。一緒に買えばお互いの通話料が無料。その謳い文句に飛び付いた。これでハルオちゃんといくら話してもタダだ。尤もこれも福祉課にバレれば没収されかねない。通院する時は用心の為、電源は切る事にした。
世田谷の福祉課は電車に乗って二駅、さらにそこから七分くらい歩く。僕は翌朝早く、事務手続きの為、福祉事務所へと向かった。当然、携帯の電源はオフだ。
窓口で『ホンマさんをお願いします』と言って、僕は長椅子に座り、壁を見ながらくるのを待った。程なくしてホンマさんが僕の隣に座る。
「住み心地はどうだい?」
「お蔭様で快適です」
「そうか。部屋は片付いた?」
「はい。友人が手伝いにきてくれましたから」
「じゃあもう僕が心配する事じゃないな。ところで、保護費なんだが」
「振込……ってわけにはいきませんよね」
「ああ。申し訳ないが、取りにきてもらうしかないね」
「解りました。ここの窓口でいいんですね?」
「ああ。申請通知はこちらで出しておくから」
「お願いします」
僕はお辞儀をして、福祉課の入っている建物から外に出た。少々窮屈な縛りはあるものの、これで小遣いに困る事はない。ハルオちゃんの会社には戻れそうに、なかった。