青春の蒼いカケラ
 翌週、もう一度打ち合わせの為に日本文学館を訪れた。タナカさんは丁寧に出版までの流れを説明してくれる。
 タイトルは『あんぽんたんへの道』。
 これから三度の推敲を経て完成に至る。
 出版社の帰りに新宿の病院に寄って薬をもらい、その帰り道、新宿西口の街をブラブラする。何だか急に作家先生になった気分だ。
 障碍者一級の手帳を福祉課で発行してもらい、それで都内あちこちを散策する。タダならどこにだって行ける。僕はそれを使って晴海ふ頭にも葛西臨海公園にも行って、その場の空気を楽しんだ。
 日本文学館のタナカさんから連絡が入った。僕の出した詩集は、思いの外売れ行きが好調らしい。新宿にある大手の本屋にも並べると約束してくれた。全国五十店舗に僕の本が並び、それを人々が手に取って買って行く。
 本屋に行って自分の本を手に取ってみた。
 結構立派な装丁が施されている。
 僕は周囲の目を気にしながら、その本を持ってレジに並んだ。


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