青春の蒼いカケラ
 翌朝、バンの横にキタノさんだけを乗せ、現場に向かった。ネットを張るだけの仕事に大勢の人間を使っていたのでは、経費が嵩んでしまって採算が取れない。キタノさんの説明通り、僕は足場の端に固結びでネットを固定した。
 昼休みにキタノさんが僕に『スーパーでチャンペを買ってきてくれ』と言ってきた。
 取り敢えずスーパーに行って店員に聞いても、“チャンペ”なんてものはない。仕方なく戻ってキタノさんに『なかったんですけど』と告げると、『チャンペってのは富山弁で女性器の事だよ』と言いながら笑い転げていた。
 どうやらからかわれただけだったようだ。
 これも“信頼の証”なのだろうか。
 何だか納得は出来なかったものの、それでも淡々と仕事を済ませ、二時には現場を切り上げて、途中、ガソリンを給油して三時には飯場に戻ってきた。
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